「ヴァイオリン自由自在(番外編)・オーケストラを楽しむ」第1回

音楽書籍「ヴァイオリン自由自在」を出版する際、お蔵行きとなってしまったオーケストラに関する章が実はあります。そこで、このブログでその文章を公開して行きたいと思います。全5回で今日は第1回目です!編集はされていませんので、読みにくい部分はあるかと思いますが、良ければお付き合いください!m(_ _)m 西谷国登

「幻の第5章 オーケストラを楽しむ」目次

まえがき

オーケストラには二種類があります。弦楽オーケストラとフル(管弦楽)オーケストラです。その中には室内オーケストラという小さい編成のオーケストラなども含まれます。

ここではそのオーケストラで演奏する、メリット、デメリット。またオーケストラではどういう体験ができるのかや、オーケストラの入団方法などをご紹介します。

ヴァイオリンはオーケストラの全ての楽器の中で半数以上を占め、メロディ主旋律を弾くことが多い花形の楽器です。ですから、ヴァイオリニストとして活動している人たちにとって、オーケストラというものはどういうものなのかということを知ってもらえれば、と思います!

第1回 オーケストラに入団する前の心構え

ーーオーケストラに入団。となると敷居が一気に高くなるような気がします。

西:そうでしょうね。オーケストラで演奏してみたいという憧れがあっても、その前に不安がいろいろあると思います。オーケストラにはどういうものがあるのか、どんなオーケストラが自分に合っているのかをご紹介しましょう。

まず、どういうオーケストラの種類が自分に合っているのか。
弦楽オーケストラなのか、フルの管弦楽オーケストラが合っているのか。フルオーケストラといっても少人数のところもあるし、逆に弦楽オーケストラでも大人数のところもある。これはアマチュアオーケストラでもプロのオーケストラでも同じです。

アマチュアオーケストラだと、講師がいるかいないかという点も検討する材料になります。

ただ音楽が好きな人たちが集まって、演奏することを楽しむためのオケなのか、それともプロである講師、トレーナーがいて、指導が入りながら上達を見込めるオケなのか。さらには常任の指揮者がいるところもあれば、常任指揮者が所属せず、その都度外部から読んでくるようなところもありますね。

オーケストラによっては、演奏会の時にメンバーが少ないパートにエキストラ(賛助)を入れる補う団もありますが、エキストラを絶対入れない!という拘りがあるオーケストラもあります。

他には、音大を出たセミプロのような人が多数を占めるオーケストラだったり、アマチュアの中に数人プロが入っているようなオーケストラもあったりと、メンバー構成だけ見ても、本当にいろいろなオーケストラがあります。

演奏する曲目でもオーケストラの特色や持ち味が分かります。バロックもの専門だったり、現代曲を中心にした曲目を演奏していたりする桶もあります。この様に色々と違った視点で見ると、そのオケの特徴がわかってきます。

ーーなるほど。どこに入ればいいのか迷ってしまいますね。大きくわけては弦楽オーケストラと管弦楽オーケストラ(フルオケ)の二つとおっしゃいましたが、どちらに入るのがいいんでしょうかね。

西:もちろん、どちらのオーケストラにもメリットとデメリットがありますので、そこから考えていきましょうか。

まずは、弦楽オーケストラです。略して「弦楽オケ」なんて言いますが、弦楽オケの編成は、弦五部のことがほとんどです。つまり、第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスという編成です。

まずメリットとしては、少人数制で一人あたりの責任が大きく、演奏を誤魔化しにくいんですね。だから、緊張もしますが、やりがいもある。しかも、大きな音を出す管楽器や打楽器がいないので、曲の中で弦の音が飲み込まれてしまうことがなく、一人一人の音がよく聴こえます。その分、自分が弾いている、自分がオーケストラの一部になっているという自覚を管弦楽オーケストラより強く持てるので、そういう楽しみは大きいかもしれません。

デメリットとしては、管弦楽オーケストラと比べると、弦楽オケは曲数が限られていることが挙げられます。

主な有名な弦楽オケの曲には、チャイコフスキーやドヴォルザークの弦楽セレナードとか、モーツァルトのアイネ・クライネ・ナハトムジーク(元々は弦楽四重奏曲)とかそういう曲が挙げられます。曲数では圧倒的に、管弦楽オーケストラに負けます。ただ、弦楽四重奏の曲を合奏版にアレンジして演奏したりすれば曲数は無限に広がります。

それから弦楽器同士なので、他の種類の楽器よりも理解し合える事が多いです。

管楽器の奏者や打楽器の奏者たちと一緒に合奏を行うと、お互いにやっぱり理解出来ない部分がでてきてしまうんですよね。それは、選曲の好みであったり、演奏の仕方であったり。

弦楽オケは、お互い理解できる部分が多いので、アンサンブルがしっかりできる率、理想に近づける確率はより高くなります。指揮者に合わせる場合に、楽器は違っていてもそこは弦楽器同士なので、アンサンブルテクニックは一緒ですから合わせやすい。

例えば、管楽器だと顔をふったり楽器を振ったりして、合わせなければいけませんが、弦楽器同士の場合は、弓を動かしただけですぐにわかるようなところがあるので、アンサンブルをちゃんとする、合奏する、合わせるという意味では管弦楽オーケストラよりも楽しめるオーケストラだと思います。

では、管弦楽オーケストラ、略して「フルオケ」の一番のメリットです!

なんといってもフルオケは、オーケストラの名曲がたくさん演奏できることです。管弦楽オーケストラは「フルオーケストラ」とも言われるように、曲目が多いですし、なにより交響曲(シンフォニー)が歴代の有名な作曲家達によって沢山作曲されています、それを体験したいなら、やっぱり管弦楽オーケストラなんですよね。

シンフォニーでもっとも有名なのは、誰もがご存知のベートーヴェン交響曲第5番「運命」!他にもドボルザークの「新世界より」とか、そういうオーケストラの名曲の数々が経験できるっていうのは魅力的ですし、ああいう大きな音の中で演奏できるっていうのは、気持ち良い。自分も大きくなった気持ちになれてすごく楽しいです。やっぱり大編成になると迫力が出ます

ただ、デメリットとしては、(前述の話と逆になりますが)なにせ大人数だし、いろいろな楽器から成り立っているので、ひとりひとりの重要性や、責任が少なくなります。

それでも、本当に全力で練習して一生懸命弾けるなら良いのですが、どうしても人間「あの人が弾いてくれてるからいいや」なんていって苦手なところをごまかして弾かない人も出てきちゃうんですね。そういう人のことを、アマチュアオケの世界では「エアーヴァイオリン奏者」、プロの世界では少し厳しいですが「演奏泥棒」なんて言います。少なくとも合奏は、自分の音を直接聴衆に届けるのではなく、全員で作る音を届けるわけです。自分の音はその一部になりますから、若干の雑音や細かな音程の注意を、怠るようになるのが大きなデメリットです。もちろんこの点は、弦楽オケでも大きな編成の場合には気をつけなくてはなりません。

ですから、合奏ばかり演奏している方は、基本の自身の技術力低下を招く危険性があります。これはその人次第、という面もありますが、しっかりソロも練習して、自分の音を聴き、自分の技術を磨いていく事が重要かと思います。

最新情報をチェックしよう!
NO IMAGE

Kunito Int'l String School!

クニトInt'lストリングスクール ヴァイオリン教室/バイオリン教室 3度の飯より教えることが大好きな講師が、アメリカ大学で行われている国際感覚豊かなレッスンを行ってます!

CTR IMG