レッスンで賛否分かれる意見シリーズ⑨「新曲を練習開始時に、プロ音源を参考にすべき?それとも楽譜に忠実にすべき?」

著者のCDアルバム

ベルリン・フィル指揮者のカラヤンとソニーの連合が1980〜90年代頃に組まれて以来、CDが爆発的に流行し、その後デジタル音源化が進み、現在ではYouTubeをはじめとするウェブ音源が流行しているおかげで、様々なプロの演奏音源を聴くことがほぼ無料で自由にできる時代になりました。

最近では、曲だけではなく、練習曲までプロが録音しCDを制作するという時代になりました。私も発表会やコンクールで演奏される曲目集のCDアルバムを制作したくらいです。

しかし、その音源を活かす生徒、全く活かさない生徒、勝手に活かし過ぎてアレンジしてしまう生徒!?色々とタイプがいまして、果たしてプロ音源は参考にすべきなのか、それとも聴かずに譜面を忠実に読み取る演奏が大事なのかを議論していきたいと思います。

プロ音源を聴くと個性が失われる?

アメリカではあまり聞いたことが無い話なのですが、よく日本の音楽界で「プロ音源を聴くと個性が失われる?」なんていうお話を聞きます、ですが、それは使い方次第です!

こういう話が出回った原因として、要は、右も左もわからない学生に多いのが、とりあえずプロ音源の真似を完全に行う、所謂「完コピ」を行う生徒が多いからなのです。もっと言ってしまうと「(権力の強い)先生の演奏を真似すれば、(もしくは、その先生の好きなプロ音源を真似すれば)受験やコンクールに受かる」などというデマ?(いや、本当だったのかな?)が出回ったことから、その先生、教授の完コピを行う生徒が急増したのです。そのことに危機感を感じて「プロ音源を聴くのをやめなさい、個性が失われてしまいます」と指導される先生が多々現れたのだと思います。

その後、「プロ音源を聴くことをやめる」ということを鵜呑みにした生徒たちの演奏は、なんとも個性の無い訳のわからない(悪い意味で個性的な)演奏をすることとなりました。参考にする演奏(音源)がないので、譜面に忠実に正確に演奏しようとする訳ですが、コンピューターのような演奏を行う。それでレッスンで個性が無いと言われれば、参考にする演奏が無いので、なんとも奇妙な的外れな演奏が出来上がることがあります。勿論そういう演奏が評価されることは滅多にありません。レッスンの先生の演奏のみの参考になるので、数時間のレッスン内で言われた限られたことのみ注意しての演奏になります。

では、どうすれば良いのか。簡単です。プロ音源を聴いて完コピをするようなことはせずに、プロ音源を「参考」にすればよいだけなのです。人間はアイデアから個性が生まれる、何かと何かがコラボすることでアイデアが生まれて来ている訳ですから、複数の音源を聴いて参考にしてアイデアや個性を生み出せば良いと思います。なにもないところから生み出そうとすれば、大半は、ただの自己満足的なものが出来上がるだけだと思います。

しかし、もっと最悪なのは、コンピューターの音源を参考にすること。たまにびっくりするのが、譜面をただ打ち込んだだけのMIDI音源を参考にして演奏している生徒がいます。これは、個性もへったくれもありません!音程を取ってリズムを知ることが精一杯になり、その後の個性はそれこそ伸びず固定観念が出来上がるので絶対にやめましょう。

私の3人の尊敬する師匠達、キャロル先生も千香士先生も音源を聴く重要性を説かれて推奨されていました。マーティン先生も音大の公開レッスンで沢山の録音を聴くことを指導されていました。是非、皆さん沢山演奏は聴いて参考にしましょう!

プロ音源のイメージとマネだけで弾く生徒

しかし、プロ音源をよく聴きすぎる生徒は、音源を聴いて、読譜を怠ってしまいイメージとマネだけで弾くので作曲家の意図とは離れ、譜面を音符を正確に弾かなくなってしまう例が多々あります。

プロ音源は参考になりますが、聴き方によっては、自分勝手な都合でアレンジ編曲してしまう場合があります。また、弾きやすいように音源のイメージを「抽象的に捉え」て、リズムも音程も間違いだらけで自分風にアレンジしてレッスンにのぞむ生徒がいます。

実は、これは完コピよりたちが悪いです。何故なら譜面を無視した「完ミス(完璧な間違い?!)」だからです!しかも、生徒によってはこれを指摘されると「先生、プロ音源はそう弾いています。だから良いはずです」と主張してくる生徒もいます。きっと、このタイプの生徒は先生に「アレンジしないでちゃんと楽譜通り弾きなさい!」と言われても、「ちゃんとプロの音源の通りにやってるのになんでやねん」と、きっと上記のような主張を頭の中でしているに違い有りません!

なぜそう言い切れるのか!?なぜなら、私が楽譜が読めない小学生時代に、そうであったからです!!!なので、実は、とてーも気持ちが分かります。ですが、中学生以降、ソルフェージュや楽典、音楽理論を学び考えは180度変わり改善しました。CDプロ音源が少し個性としてアレンジされていても、しっかりちゃぁんと「譜面通りに演奏されていること」を理解するようになってからは、そのまま適当に聴いて真似するだけの様な浅はかなことをやめるようになりました。

つまり、このタイプの生徒をわかりやすく言えば、手品師の真似を、タネを知らないで、見様見真似で行い、いつまで経ってもその手品が出来ない状態なのかな〜と思います。でもタネを教えても、そのタネを認めない感じなのかなとも思います。

譜面が得意で譜面に忠実だが、プロ音源を聴かない生徒

逆に、譜面だけで弾く生徒もいて、まったくプロ音源を聴かずに、曲の感じを掴まない生徒もいます。

実はこのタイプの生徒は、レッスンの先生にとって、とても優秀な生徒と思われることが多いです。何故なら、先ずは先生は、譜面通りに弾かせることがレッスンでの仕事ですから、それを最初から気をつけて練習してきてくれる生徒は、先生にとってとても助かるかるのです。ですが、残念ながら、譜面通りに弾けたとしても音源を聴かないと曲感を掴むことが出来ず、それ以上にもなりません。

特に音源を聴かないヴァイオリンの生徒となると、オーケストラやピアノの伴奏に興味が無くなります。というのも、譜面に伴奏譜が書かれていないからです。豆譜(まめふ)という伴奏の譜面が入っている親切に入っているものもありますが、自分のメロディを演奏している間に書かれている楽譜は滅多にありません。なので、メロディを演奏しているときに、一緒に演奏するピアノやオーケストラが何をしているのか理解を出来ないのです。

ピアノの前奏や間奏後に、自分が入らなくてはいけないタイミングもよく間違えることがありますし、なにより、自分のソロパートしか頭に入っていない生徒は、音楽の全体把握が出来ていなく、結局、曲の理解がとても難しくなります。

両方大事、要は聴き方が大事!

色々な音源を聴いて、その演奏をどう思うかが大事です。そして、現在沢山ある音源の中でも、理想の好きな人の音源を選んで聴きことです!そして、可能なら譜面を開きながら聴くことも大事。今ならスキャンして、タブレットで聴いて読譜をすることも可能です。すごい時代になったものです。

リズムが苦手なのなら、譜面を見ながらプロ音源を聴く際に、拍を指や頭や体で取りながら聴くこと。

最終的に、聴いていて、ソロパートの音源だけではなく、伴奏のオーケストラの批評まで、出来れば大したものです。

まとめ・最高の参考音源は、師匠の演奏

もちろん、最高の音源は、師匠の演奏だと思います。その先生にレッスンに習っているということは、その先生の望む演奏に近づくように指導されています。その先生と感覚の違う演奏を参考にすれば摩擦が起きることでしょう。こういう摩擦から、「個性が潰れるから聴くな!」という指導が増えたこともあるかもしれません。

楽器は、性格や個性が出ますから、人それぞれ弾き方や演奏の仕方、音色やフレーズ感まで違います。楽器ももちろん違います。なので、その指導者の演奏会や音源を聴くということは、最大の上達への近道であり、最高の参考音源ということになると思います。

もちろんCDや音源を持たない先生もいることでしょう。その場合は、部分的にでも出来るだけレッスンで見本演奏してもらうことが大事です。私もマーティン先生やキャロル先生、千香士先生の演奏会に足を運び、もう耳だけではなく、目でボウイングをひたすら研究していました。

是非皆さんも、複数の音源を聴いて曲の感じを参考&理解し、譜面から色々なことを読み取り、更に自分の音を録音してどう違うか、何が良くないのか考えつつ練習してください。きっと今より早い上達をされることでしょう!

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Kunito Int'l String School!

クニトInt'lストリングスクール ヴァイオリン教室/バイオリン教室 3度の飯より教えることが大好きな講師が、アメリカ大学で行われている国際感覚豊かなレッスンを行ってます!

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