「ヴァイオリン自由自在(番外編)・オーケストラを楽しむ」第5回

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音楽書籍「ヴァイオリン自由自在」を出版する際、お蔵行きとなってしまったオーケストラに関する章が実はあります。そこで、このブログでその文章を公開して行きたいと思います。全5回で今日は第5回目です!編集はされていませんので、読みにくい部分はあるかと思いますが、良ければお付き合いください!m(_ _)m 西谷国登

「幻の第5章 オーケストラを楽しむ」目次

第5回どういう人がオーケストラの入団審査に通りやすい?音楽監督、指揮者は入団希望者のどこを見ていますか?

ーーでは、実際にオーケストラに入団するにあたり、どういう手順で入団が決まるのでしょうか?

西:入団する際には、オーディションがあるオーケストラが多いです。とくにレヴェルの高いオーケストラになってくると、まずオーディションがあると思ったほうがいいでしょう。そして、できれば入団オーディションがあるようなアマチュアオーケストラに入ることをオススメします。というのも、そのオーディション参加者のレヴェルに合ったオーケストラに入団するのがベストですから、オーディションに合格すれば、そのオーケストラがオーディション参加者を求めていますし、そうでなければ、求められず合わないオケで「入らなくてよかった」となり時間の浪費を避けられます。

この入団オーディションっていうのは、実はテクニックだけを見ている訳ではない事が多いです。特にアマチュアの場合、上手い下手だけを審査しているわけではないのです。実は、“人を見ている”という部分の方が大きい場合もあります!

つまり、オーディションを審査する方は、このオーケストラに合う人かどうかを見て選んでいます。だから落とされたからといって、演奏が下手とか、悪い人に見られた、というわけではないので、落ち込む必要はありません。「類は友を呼ぶ」という言葉の通り、そのオーケストラの雰囲気に合うかどうかが大事なのです。そういう意味では合わなかった場合は落としてもらったほうが、後々お互いにより嫌な思いもしないし、理にかなっていると思います。

逆に入団オーディションが無い、誰でもウェルカムなオーケストラは、人数が少ないからいつでも団員が欲しい、という、余裕があまりないオーケストラの可能性があります。なので、新たな団員が入った後に、問題がでてくることも多々あります。自分が良かったとしても、その後オーディションというフィルター無しに入ってくる方々と合わなくなって、最悪楽しくなくなってやめたり、続かなくなる可能性もあります。

もちろん、創立したばかりのオーケストラであれば仕方がないですが、そういう点も気にしておいて損はないですよ。

オーディションをする以上、もちろん楽器が上手い人、戦力になる人は当然欲しいです。ただ、ここで言う上手い人というのは、課題曲をちゃんとこなせる人や自由曲をある程度ちゃんと弾ける人。別にプロ並みに上手い必要はないのですよ。

ちなみにプロのオーケストラのヴァイオリン奏者のための入団オーディションでは、必ず演奏させられる課題曲があります。これは、全世界のプロオケ共通で、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲の第3番、第4番、第5番(カデンツァ付き)を課題曲の一つとして演奏させられます。そして、オーケストラスターディという、オーケストラの曲の難しい一部分を切り取って、そこが課題曲になるということも多々あります。ヴァイオリンの場合、R.シュトラウスのドンファンとか、シューマンの協奏曲交響曲2番の2楽章とか、モーツァルトの後期の交響曲35番とかが基本で、他にプロコフィエフの「古典交響曲」とかベートーヴェンの交響曲第9番「合唱付き」の第2楽章などがポピュラーです。

ただ面白いのは、プロの世界でもやっぱり演奏の上手さと同様に協調性や社交性、それから愛想とか愛嬌ある人は大事なのです。

プロの場合は入団オーディションに合格した後も。半年から1年ぐらい試用期間があるんですよね。どんなに上手い人でも、勝手に弾いちゃうとか勝手に物事を進めちゃうとか、コミュニケーションを取らないとか、そういう人は試用期間で落とされます。実際、世界トップ級のプロオケのヴィオラプレイヤーでとても上手い女性がいたのですが、その人もソロみたいに弾きすぎちゃうってことで、試用期間で落とされちゃったという話も聞きました。

だから音楽監督っていうのは、プロでもアマチュアでも、楽器のことを見ていながらも、それ以上に社交性、協調性があるかなとか、この楽団でやっていけるかなっていうのを見ています。

だから、どういう人が審査に通りやすいかって言われたら、「そのオーケストラに合う人が通りやすい」が正解。先ほども言いましたが「類は友を呼ぶ」ですよね。そこが基本かなと思います。

まとめ

オーケストラは結局集団生活なんだと思います。一週間に1回ぐらいではありますが、簡単な集団生活の中で演奏するものです。それでいて、ひとりひとりが思う理想に近づくのが、一番難しい合奏編成だと言えるでしょう。

当然ソロで演奏する方が自由気ままに曲をカスタマイズできますし、自分さえ努力すれば理想に近づけます。もちろん、そんなソロでも、理想の演奏を実現するのは難しいんですけどね。それが二人になれば余計に難しくなるし、三人になればさらに難しい。そしてオーケストラともなると相当難しいです。オーケストラは、なにより指揮者の意向に沿って演奏する必要もあります。

ただ、その指揮者の音楽を学べるという部分はソロや室内楽では得られない面白さだと思います。なので、音楽的な勉強にオーケストラは必ずなります。

また、皆が共通の理想を持ち、そしてそのリーダーである指揮者が団員たちの理想に通じる指揮をされる場合は、一丸となって団結力を発揮しますし、その時に、より素晴らしい音楽を演奏でき、たくさんの人を感動させるような音楽を作れるのではないかなと思います。なかなか、それはプロであっても難しいですが・・。

オーケストラとは「ハイリスク・ハイリターン」だと思います。

自分の理想を実現するのはかなり難しいですが、オーケストラの練習には、ある程度の時間と労力を捧げなくてはならないリスクはある。ですが理想を求め、皆の理想が叶ったときの達成感や感動は、他では勿論ソロでは味わえません。この経験は、グループワークを行った事がある方ならうなづけると思います。

「オーケストラはハイリスク・ハイリターン」

自分に合うオーケストラも簡単には見つからないかもしれません。でも、それを乗り越えてハイリターンを得られそうなオーケストラを探してみましょう!(完)


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