天才児を教えるということ
ヴァイオリンをレッスンしていると、必ず天才や神童と呼ばれるような生徒さんに出会います。
先生にとって、天才的な子が生徒になれば、これ以上ラッキーなことは無いですし、同時に大きな責任を持つことになるでしょう。
しかし、よくある話ですが、子供の頃すごく天才で変わった子だったのに、育つと普通になっちゃった。とか、まもとになっちゃった。神童が、普通の常識人になってしまう事を多々耳にします。
例えば、天才的な絵を描く子が、正統派の描き方を学んだら、普通の絵を描く子になっちゃったという話です。
私は子供の頃、ヴァイオリンを弾くことが好きなだけで、何をやっても出来ない凡人以下の生徒でした。ですから、先生業を始めて間もない頃のわたしは、ラッキーにも色々な天才キッズ達に出会い正直戸惑いました。
天才児が生徒になったは良いものの、どう教えりゃいいねん。私より、神童だった先生達に習うほうが良いんとちゃうか。と当初は、疑問や不安を覚えたものです。
ですが、疑問を持ちながら指導をしたり、試行錯誤したりしながら、私も天才の育て方を経験し学び確立しました。わたしは、確かに天才的奏者ではありませんが、少なくとも教えることに関しては、多分天才なので。(←自信過剰、恥)言い過ぎました。気をつけますスミマセン。。ただ、教えることに関しては結果も出してきたので多少なりとも自信はあります!(←言っちゃった・・苦笑)
そこで今回は「天才生徒の正しい育て方は、自然に任せる?教え込む?」という事を題材にディスカッションしていきたいと思います!
ヴァイオリニストにおける天才とはなんぞや!?
まず「天才ってなんやねん」「うちの子は天才やで」と言われれば、その通りなわけですし、全員天才だと言われれば天才です。ヴァイオリニストになるために、天才である必要はありませんし、天才の子たちがプロのヴァイオリニストになるかと言われれば、そんなことは全くありません。本当にヴァイオリンが好きになれた子達で、楽器を使って工夫しお仕事出来る子達が、プロのヴァイオリニストになります。
ただ、ここで議論する「天才」は、所謂言われなくても、言ってもなんでもできちゃう子です。ずば抜けた才能を持ち人並み以上に出来てしまう。というタイプです。
以下引用ですが、
天才(てんさい)は、天性の才能、生まれつき備わった優れた才能(生まれつき優れた才能を備えた人物[1])のことである。天才は、人の努力では至らないレベルの才能を秘めた人物を指す。
-wikipedia
つまり、ヴァイオリンで言えば、年齢が若いのに
・演奏表現能力が既にずば抜けている。
・譜読みが異常に早く、曲の進度が早い。
・どんな技術も一度聴けば出来てしまう
・音程がほとんど外れない。
・音が驚くほど大人っぽく圧倒的に音質高い綺麗な音を出す
などなどでしょうか。これらの天才について議論します。
天才はなんで生まれる?条件は?
私が出会った天才児たちを思い返すと、天才になる条件として、環境と、身体的特徴と、両親の理解と音楽に対する情熱かな?と思います。一番影響するのは、身体的特徴。いくら名教師いえども身体は育てられません。背の高い身長と体幹がしっかりしている身体、そして、なにより「耳」です。耳が優れていると、真似が上手になり、先生達の技術をすぐに真似出来てしまいます。よく、耳コピして遊んでいる子たちは、音楽の世界に行きやすいと言われますが、まさにその通りかなと思います。圧倒的な耳の良さがわたしは、天才児の秘訣だと睨んでいますよ。聴く能力が特に優れていると、めちゃめちゃ有利です。(人の話を)聞く能力も重要ですが。。
天才にもデメリットはある。
しかし、そんな天才にもデメリットはあります。一番のデメリットは過信です。天才は褒められることが多く、自信が付きやすい。プライドも高い。それが故に、指導されることにめっぽう弱いのであります。指導者はもちろん、一番辛いのは親御さんとの練習でしょう。
例えば、その生徒が変な楽器の持ち方をしている場合、先生の指摘を修正したい親御さんの言うことを聞けない、、というか、理解出来ないのです。何故なら、自信もあるし、既にある程度良い音も出しているし、何も支障がないので、直したくない!なぜ直すのか、ということに理解が到達しないのです。コンクールで賞を獲ったりしていれば尚更理解出来なくなります。ガツーンとどこかで壁に当たってくれれば良いのですが、天才はやはり壁を回避するのも上手いのですよね〜。苦笑
天才は自然に任せる重要性
私が、世界のコンクールなどで学生時代賞を獲りまくっていたような天才奏者の先生に「こどもたちに表現指導をしようと考えていますが。いつ教えればよいのでしょうか?」と質問したところ「そんなのは自然に任せてれば良いのよ」と答えが返って来たことがありました。やはり「達人は達人を知る。」と言いますが、普通の生徒さんに、自然に任していても、表現能力が勝手に付くことは稀です。しかし!天才は、それが出来てしまうからこそ、自然に任せるのが一番なことが多いようです。
わたしが、昔、天才の生徒さんに、弓のちゃんとした、所謂常識的な弓の持ち方を教えたところ、雑音が出始めたり、技が出来なくなってしまった。ということがありました。わたしは、慌てて教えたことを謝り、自分の持ち方で、そのままでやって良いと許可を出しました。そのとき「天才児の教育は、基本は、手をくださずに自然に任せることが大事」と悟りました。天才は常識が通じないのですよ。先生のプライド優先して強制指導すると、絶対に失敗します。というか、言いたくありませんが、それで失敗した生徒さんも過去にいたかもしれません。世の中には沢山いると想像します。
しかし、天才をほおっておくのは良くない
だからと言って、指導者として、親御さんに任されている以上、何もしないわけに行きません。レッスンは仕事です。そこで、一番良いと今確信している、わたしの天才児の指導の仕方を内緒で伝授します。それは、その子がやっていることを否定せず、むしろ肯定し、褒め称えた上で、こういうやり方もあるのだ。と色々な弾き方を教えて選ばせることで、才能を活かします。つまり、選択肢を増やさせて、幅を持たせてあげることが重要かなと思います。それを選ぶのは天才なのだから信用してあげて、で良いかと思います。
引き出しは多いほう良いが絶対有利ですからね。先生たちは、その子の才能を最大限尊重し、自分の学んできたことを紹介し教えて、選択肢を増やさせて工夫させる、それが一番大事なことだと思います。そうすれば、その自然な天才的な才能が潰されることはありません。断定します!
天才的な子達が、一人でも多く指導者や環境に潰さないどころか、成功に導かれることを祈ります!!!
天才を育てることは指導者に大きなメリットがあり、皆を天才に近づけることが可能!
本当にわたしの子供時代は凡人生徒だったので、才能ある子達や、可能性ある子達をどう育てて良いか、最初はわかりませんでした。ですが、天才児達が上手く指導できるようになると、その子供の弾き方を無意識レベルで理解出来て、他の子達に弾き方をわかりやすく伝授することが出来るようになります。その結果、教室のレヴェルの子達を天才児並みに近づけることが出来るようになります。
どうしても、先生たちは才能ある子を特別扱いしてしまい、天才児の子のレッスンに集中してしまいがちです。ですが、天才児がレッスンに来たら、同時に他のレッスンしている子達にも上達のチャンスが来たと、天才の子達がやっている奏法をわかりやすく伝授させる技術も、先生たちにあると有利かなと思います。
一人でも指導者によってより多くの生徒たちが才能を持ち続けることを祈ります!
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過去のレッスンで賛否わかれる意見シリーズ一覧
- レッスンで賛否わかれる意見シリーズ①「表現の指導は、自然に任せる?介入すべき?」
- レッスンで賛否わかれる意見シリーズ②「理想のレッスンは優しい指導?厳しい指導?」
- レッスンで賛否わかれる意見シリーズ③「子供の理想の練習は、強制か?自主か?」
- レッスンで賛否わかれる意見シリーズ④「時代背景を考える演奏指導はコンクールで正解か?否か?」
- レッスンで賛否わかれる意見シリーズ⑤「理想の練習は、ゆっくりなテンポ?速いテンポ?」
- レッスンで賛否わかれる意見シリーズ⑥「理想の運指(フィンガリング)は表現豊かな運指か?より簡単な運指か?」
- レッスンで賛否わかれる意見シリーズ⑦「ヴァイオリンをはじめるベストな時期は、大人なの?子供なの?」
- レッスンで賛否わかれる意見シリーズ⑧「ヴァイオリン習い始めに使用すべき読譜方法は、ドレミ音名?指番号?」
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- レッスンで賛否分かれる意見シリーズ⑱「楽器の練習をしていないことをレッスンで先生に白状することは、正解?不正解?」