レッスンで賛否分かれる意見シリーズ⑮「ヴァイオリンにおける基礎は、ソロ曲の練習中でも鍛えられる?鍛えられない?」

なんと、2年振りにこのレッスンで賛否分かれる意見シリーズを更新します!
時が経つのがめちゃめちゃ早いですね、、久しぶりにイベント以外のブログ更新です!

ヴァイオリン学習者の間で、基礎の話は尽きない

ヴァイオリンは、他の楽器と比べても基礎にかなり時間を要する楽器だと思います。
ヴァイオリンは、ピアノのように、直ぐマトモに標準的な綺麗な音が出ませんからね。。悲

そんな為に、ヴァイオリン学習者の間でも基礎の話や噂が飛び交います。
上級者となると「基礎が大事なんだよ基礎が!えっへん」みたいに言われる声が多く聞こえてきますし、コンクール審査員の講評用紙にも「基礎」という言葉が「安易に!」使用されることが多いです。「とりあえず基礎が足りない!と書いておけばいいや」的な講評をたくさん見受けます。笑 そのために、コンクール参加者たちは「基礎」という言葉に翻弄されがちになります。涙

今や大人気のTSUKEMENで活躍中のさだまさしさんの息子、佐田君が学生時代に突然「西谷先輩!ヴァイオリンの基礎って、(練習中の)ソロ曲の中でも鍛えられると思いますか?鍛えられますよね?」と私に聞いてきたことがありました。

その時、先輩のくせに何もわかっていない私は偉そうに「んー、可能じゃね?」って答えると、彼は「そうですよね!やったー!」と跳ねてどっか行ってしまったことが記憶にあります。笑

それを今になって改めてどう思うか。その時の私の答えは合っていたのか。ということを検証したいと思います!

ヴァイオリンの基礎ってなあに?

よくレッスンで「うちの子は基礎がないので、、」とか「基礎を鍛えたいのですが」と相談されることが多々あります。

その答えにわたしは「そもそも心配されている「基礎」のお話ですが、まずヴァイオリンの基礎って何でしょうか?なんの基礎の話ですか?」と必ず分かっていない振りをして!?返すのですが、もちろん実は、分かってます。笑

大体の方達が思っているヴァイオリンの基礎とは、如何にクリアーに音程を取れるか。その次に、ボウイングのことや姿勢のこと、どれほど音質を磨き上げられているかだと思います。要はお母さんたちは、曲ばかりやっていて、基礎を疎かにしているからなんとかせいっ!ていう話をされたいことは分かっております。

ただ、単純に基礎と言っても色々あるのです。

ヴァイオリンにおける基礎は、大きく分けて3種類に分けられると思います。技術と表現能力と身体能力の3つです。技術は、勿論ヴァイオリンにおけるテクニック、表現能力は、個性(性格)や環境から作られる能力、そして身体能力は、親御さんからのDNAもそうですが、運動能力です。激しい運動音痴は、ヴァイオリニストには実は向きません。なので、鍛える必要が実はあります。すぐ疲れるようだと練習も出来ませんからね。汗

今回は、そのうちヴァイオリンの「技術の基礎」についてお話しさせていただければと思います!

基礎を鍛える条件、ハードルは意外にも高い

基礎を本格的にやる。ということは「信念、決断力、根気、勇気」の4つの要素が必要になってきます。
何故なら、ある程度弾けるようになってくると、楽器の弾き方に自信もプライドも出てくるからです。基礎が大事だと分かっていても、実際基礎を始めると、その基礎練習の必要性に無意識レヴェルで疑問符が付くようになります。これが厄介なのです。

つまり基礎を鍛えて成功するには、以下の要素が必要です

1、信念:楽器や弓の持ち方、姿勢、音程感覚を変更するので、その変更を信じて上達することを信じること

2、決断:慣れた持ち方を直し、一時的に弾きにくくなることから、変更する決断をすること。基礎を鍛えるということは、弾き方を変えることなので。

3、根気:揺らぎない根気と習慣を大事にすること。集中力を失った基礎力鍛錬は、無意味に近いです!それならソロ曲を自由に弾いている方がマシ!

4、勇気:最後に、基礎に時間を費やすという、ある意味賭けのような勇気が必要です。どうしても目の前にあるソロ曲が不安になってしまって、基礎を1日でも疎かにしてしまうことがあります。揺るぎない基礎に立ち向かう勇気を持つこと。

必要そうだからと安易に、面白くない修行的な基礎をやらせると、ヴァイオリンに悪いイメージがついてしまう可能性が高くなります。また、基礎を中断してしまった場合、基礎が出来なかった、基礎に落ちこぼれたから上手くならない、上手くないという変な自信喪失にもつながるのです。そんなことは無いのに、、

わたしの師匠たちの言葉やエピソード

次に、私の師匠たちの基礎についての、エピソードを紹介します。

芸大名誉教授であられた、故田中千香士先生とのレッスンで基礎の話になったところ、「上手い子たち、例えば一曲一曲、一音一音、超長時間、丁寧に練習して、音程を一切外さず曲を完成できる才能がある子達には、基礎なんかいらないんだよ。だって、曲を長期間長時間練習出来る時間と努力が出来るのだから基礎なんかやらなくても弾けるの。ただ、そうじゃない子達は、基礎をやらないと短時間で曲が上手く弾けるようにならないといけない。一回、修行のように1年でも良いから、コンクールはもちろんソロ曲や練習曲は一切中止して、第1ポジションから、ひたすら音階練習したり、ロングトーンを毎日8時間くらい地道に練習したりすれば形になる。そういう期間が必要だ。やりたければ付き合うぜ!笑 お箸を持つように、音程を取れるようになることが重要。だから子供の頃からやらないと!」と熱弁しておりました。汗 若干過激な理論ですが、、。

次に、ハイフェッツの愛弟子であった、キャロルシンデル先生は、「基礎は、和音をビブラートかけても良いから、綺麗に超ゆっくり練習していくこと、そしてバッハの無伴奏ソナタを練習することを基礎に、私はしてたわ。(師匠の)ヤッシャ(ハイフェッツ)なんか、もう基礎も超越して、パガニーニを越えるような音階を音程狂わずに弾いていたわねぇ」と笑いながら仰っておりました。曲を基礎に出来る天才パターンですね!

最後に、わたしのニューヨーク留学時代の師匠、マーティン・ビーバー先生は、「精密機械のように、一音一音、詳細なプラン(計画)が立てられているかどうか。小さな、ポジション移動や移弦に至るまで、どうやって動くか、ヴィブラートもどのくらいのヴィブラートをするか。一音一音どういう音を出したいのか。フレーズは?全て、計画を立て、想定通りに行くように綿密な演奏計画が大事なのです」と言われました。恐ろしいほど綺麗で繊細な音を出すマーティン先生ならではの回答でした。

わたし(西谷国登)が考える基礎とは!?

それでは、私の基礎に対する意見です!

現在わたしが先生や審査員という立場になり「本当の基礎力」とはなんなのか!?と考えた結果、それは「聴力」だと結論づけました!(^^)/

つまり、私は音楽についてのすべての基礎能力は結局「耳」だと思うのです。

音楽なんだから、聴くものなのだから、耳が大事なのは、当たり前じゃないか。と思われる方がいると思うのですが、楽器を学んでいると「耳を鍛える」という考え方は、結構忘れがちになります。

わたしは幸運にも、いわゆる神童や天才、何でもすぐ出来る優れた子達と、たくさん出会うことが出来ました。

その子達のレッスンをしていて、最初、何故そんなに私が言ったことがすぐ出来るのか。言わなくても出来てしまうのか。凡人のわたしには、不思議で仕方ありませんでした。

この子達の優れたものは、一体どこから来ているのでしょうか。才能と呼ばれる天性なものなのか、運動神経が良いからか、生まれ持ったものなのか、遺伝子?DNA?とか色々と考え、しばらく悩みました、ですが、わたしは結論として「どのくらい「耳」が発達しているのか」が楽器の成長と関係がある。ということに辿り着きました。

表現能力や身体能力は、先生や環境など、その生徒の性格が関わってくるものですが、ヴァイオリンの技術に関しては「耳」が勝負だと思います!

その生徒の耳が、詳細まで、出来ないことを許せるか許せないかという「耳」なのかどうか。
そして、耳コピのように、耳を使って、その技術のコピーが真似が出来るか出来ないか。
優れた耳を持っていると、耳から得た情報を、筋肉に伝えてその技術を出来るように自動的にしてしまうのです。もし、その技術に出会った瞬間できなくとも、耳が理解していれば、その筋肉につながり、筋肉に伝え続けていち早く出来るようになるのです。

あらゆる技術に関する全ての解決方法は、耳が基礎だと私は間違いなく断定します!

その考え方から、最初の疑問を解いていきたいと思います。

ソロ曲の中で学ぶ基礎VS教本から学ぶ基礎

ソロ曲の中で基礎力向上

ソロ曲で基礎力を向上させるには、かなりストリクトに自分の音に「耳」を傾けて、音程直しから雑音の除去と同時に表現のことまで、気を遣わないといけないことが沢山あります。そういう多方面への多大なる気の使い、気配りが出来れば、ソロ曲を使っても十分基礎が学べると思います。

イツァーク・パールマンが「自分の音を聴ける生徒ほど上手い奏者」だと言っていたらしいのですが、ソロ曲で基礎を学ぶためには、ちゃんと自分の音を聴ける「耳」を持っていることが前提だと思います。

それにソロの曲の中には、無数の音階やトリックがありますから基礎の勉強になりますし、それが出来るなら、わざわざつまらない音階教本や基礎の教本を学ぶ必要はありません!

実は、すごく綺麗な音を出されて上手な方達の中には、音階を一切練習してきていないプロも沢山いることも事実なのです!なので、基礎の必要性に不安がることはないのです!

音階や基礎教本から学ぶ基礎

一方で、音階教本や、基礎の教本から基礎を学ぶことは、とても効率が良いです。何故なら、余計な、曲の時代背景から表現などを気にせず、その会得したい基礎技術に、集中して取り組むことができるからです。

しかし、デメリットとして、基礎練習は最高につまらないと思われる方が多いことです。笑 基礎練習をしている間は、根気が必要なのです!

基礎練習をしている間は、何の課題に集中して取り組んでいるのかを明確にすること。そして上手くなった時の理想の状態を想像しながら練習することが大事です。単に基礎をやらされているのでは、あまり結果は出ません。良薬口に苦しで、修行の精神で基礎に取り組まないと、相当な時間が無意味になります!特に子供の頃は、余計に基礎の重要さを理解することが難しいですし、飽きやすいですから、基礎「ばかり」に取り組むより、基礎の比率を低くして、ソロ曲をガンガンやらせる方が「より速い上達」のために得策なことが多いと思います。

こういう基礎を疎かにしてもOKな説明をすると、基礎を軽視していると思われがちですが、逆に「基礎を軽視せず重視しているからこそ、知っているからこそ、最初は基礎に集中させられない」という考え方もあるのです。

私の意見ですが、基礎の大切さと大変さを理解していない奏者ほど、基礎は大事だから!と安易に基礎をやらせてしまい、結局、子供達の楽器に対する意欲や練習をつまらなくさせているんちゃうかなとも思います。

ですが、勿論基礎は大事ですよ!勘違いしないでください!?いいですか?何度も言いますよ!基礎はやらない方が良いとは、全く思いません。わたしは、基礎をかなり高校生以降に、かなりストイックに取り組んだおかげで今があるので、基礎推進派です。

本当に、基礎が「今」必要なのだ!今でしょ!と理解させることが出来て、我慢強く基礎に取り組める生徒には、ガンガン基礎をやらせるべきでしょう。そうでないと判断するなら、強制はしない方が私は良いと経験から思います。上を目指すなら基礎という壁には当たりますし、必要なら人間自らやります。まだ必要でなくてもいられる時期は、楽しい方が上手く長く続きますし、基礎練習に集中せずとも、ある程度は曲の中で、様々なテクニックに出会い、基礎の上達はのぞめます。ただ、それ以上にはなりませんが、、厳

まとめ

わたしの持論では、ヴァイオリンにおける基礎は、ソロの曲でも十分鍛えられます。

しかし、基礎を意識しながらソロ曲を練習することは難易度が高く、普段から基礎について頭の中に、意識と知識が無いと効率が悪くなります。それならば、小野アンナやカールフレッシュの音階教本、そしてシェラディークやセブシックなどの基礎教本を使用して、なにを上達したいのかを明確に意識しながら練習することが大事だと思います。

一番の悪は、基礎の音階や教本を練習する際に、目的無く、作業のように、ぼーっとなにも考えずに練習していること。それで、基礎をやって気になってしまうことが恐ろしく、これが一番の時間の無駄であり、それならソロ曲を練習している方が遥かにマシなのです。

基礎を練習するかどうかは、理解と「信頼と決断と根気と勇気」次第ですね!!やるかどうかは、あなた次第!興味がある方は是非、自分の師匠、先生に相談してみましょう!(^^)/

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Kunito Int'l String School!

クニトInt'lストリングスクール ヴァイオリン教室/バイオリン教室 3度の飯より教えることが大好きな講師が、アメリカ大学で行われている国際感覚豊かなレッスンを行ってます!

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