レッスンで賛否分かれる意見シリーズ㉑「ヴァイオリンレッスンに集中するには、部活動はするべき?しないべき?」

前回この「賛否シリーズ」を更新したのが、気がつけばもう1年前。時間の流れの早さに驚きますが、ありがたいことにこのシリーズは今でも毎日のようにアクセスをいただいており、ブログの中でも人気コーナーとなっています。ご愛読くださっている皆さま、本当にありがとうございます!

さて、今回のテーマは、特に小学校から中学校へ進学するタイミングで多く寄せられるご相談、「部活動はすべきか否か」について。
「ヴァイオリンのレッスンに集中させたいので、部活はやめた方がいいでしょうか?」
「レッスンに集中してほしい気持ちはあるけれど、本人が部活をやりたいと言っていて…」といったお声は、毎年よくいただきます。

このテーマに対する私の答えは、非常に個人的な偏見と独断に基づいたものではありますが、同じように悩まれている親御さんや生徒さんの参考になればと思い、今回は少し踏み込んでお話しさせていただきます!!


部活をしないメリットとデメリット

まず、「部活動に参加しない」という選択肢には、非常に大きなメリットが存在します。なんといっても、ヴァイオリンの練習時間が確保しやすくなり、レッスン時間も柔軟に調整しやすくなります。これは、指導する側からすると非常にありがたいことですし、生徒の技術向上に直結する大きな利点でもあります。加えて、ピアノやソルフェージュといった他の音楽的訓練にも時間を割けるようになり、全体的な音楽力の底上げにもつながります。

さらに、コンクールや受験を控えている生徒にとっては、部活動が生活の負担になってしまうケースも少なくありません。日々の練習がストレスなく行えるという意味では、部活をしないという選択は一見、理想的にさえ思えます。

しかし一方で、部活動に参加しないことによって得られないものも確かに存在します。

たとえば、部活を通してできる友達や先輩との関係、初めて体験する先輩後輩の上下関係、学校生活の中での達成感や一体感などは、レッスンだけでは得にくいものです。

そういった経験は、演奏には直接関係ないように思えても、実は長い人生において、人間性や表現力に深く関わってくるものだと私は思っています。

また、運動系の部活動を行っていない場合、体力の向上が見込めず、家での生活が中心になってしまうと、精神的にも閉じこもりがちになる危険性があります。

たとえ「練習に専念できる」と言っても、実際にはスマホやゲームの誘惑に負けてしまい、親の目の届くところだけで“頑張っているふり”をする、というパターンもよく見かけます。そうなると、ヴァイオリンにも部活にも集中できない、ただの中途半端な生活になってしまうこともあるのです。


ヴァイオリンレッスンに役立つ部活・クラブは?

私の日本の師匠でした故・田中千香士氏は、「魅力的な演奏をする人間は、たいてい何かしらの人生経験を豊富に持っている」とおっしゃっていました。これはまさにその通りで、クラシック音楽には恋愛や人間模様を描いた作品が多く、演奏者自身の経験が表現に深みを与えることも少なくありません。

特に、音楽系の部活動――吹奏楽部や合唱部、学校にオーケストラがあるならばそこへの所属は、演奏経験の幅を広げ、音楽仲間との交流という点でも非常に有意義です。共に演奏し、音を合わせ、コンクールに臨む経験は、何年経っても心に残る大切な時間になります。

また、演劇部で身につける表現力、美術部で養われる創造性、家庭科部で得られる生活力、そして運動部での体力や集中力の鍛錬など、どれも一見ヴァイオリンとは関係がなさそうでいて、実は表現や継続力の面で確実に役立ってくると私は考えています。

もちろん、すべての部活動が良いとは限りません。活動が過度にハードで体力を削がれる部活や、逆にただの「たまり場」と化しているような部活では、本来得られるべき経験が得られない可能性もあります。ただ、それでも仲間との何気ない会話や、ふざけ合いの中に、後に音楽家として大切になる“社会性”や“感性”が育っていくのも事実だとわたしは考えます。


部活との両立の仕方

ヴァイオリンの練習しながら部活をやる・やらないは、最終的には「両立できるかどうか」が鍵となります。

特に、その部活が週にどの程度の頻度で活動しているのか、コンクールや大会などの外部活動がどれくらいあるのか、顧問の先生がどれほどの熱量で指導しているのかといった点は、事前にしっかり把握しておくべき要素です。

また、両立の上手さという点では、実は「ヴァイオリンが上手な子ほど、部活とのバランス感覚にも長けている」ように感じます。

自分で時間をうまく配分し、目標に向かって努力できる子は、部活があるからといって練習をおろそかにすることはありません。

逆に、部活を理由に楽器を辞めたくなるほど気持ちが傾いてしまったとしたら、それは一つの転機と考えても良いかもしれません。


部活にハマり過ぎるなら、楽器を一旦諦めるのも一案

少し厳しいようですが、もしその部活が楽しくて仕方がない、練習よりも部活に熱中してしまうという場合には、一度ヴァイオリンから離れるという選択も否定すべきではないと思います。

特に中学生以降であれば、自分の意志で選んだものに本気で打ち込むという経験は、何よりも価値があります。確かに、これまでかけてきた時間や努力、そしてコンクールでの実績などを手放すことは簡単ではありません。でも、「好き」という感情に正直になって全力で取り組めることが見つかったのなら、それは人生の中で大きな意味を持つはずです。

ヴァイオリンは、いつでも戻ってくることができます。情熱を持って再開したとき、その経験は必ず新しい演奏に生きてくるでしょう。


結論・部活動は経験すべき

私の結論はシンプルです。
「部活動は、やりたいならやるべき」です。但し、受験前や受けるコンクールが多いならば、それはバランスを考えながら、大事な方を選ぶことが大事です。

しかし、どちらもゼロにする必要は無いかなと思います。

現在、自由な教育、部活動を尊重されているの時代なの大丈夫だと、わたしは思います。
もちろんそれは、部活動にもよるので見極めが大事です。

若い時期にしか得られない経験を、身体と心でしっかりと刻むこと。
それは、将来プロの演奏家を目指すにせよ、別の道を選ぶにせよ、確実に力になるものだと思います。

そして、たとえ練習“だけ”をしていたとしても、それでプロになれるとは限りません。むしろ、勉強や友情、恋愛や失敗といった人生の様々な経験が、その人の演奏に説得力や魅力を与えていくのだと私は思います。

では最後に「部活動を疑問に思う皆さんに」ひとつ問いかけてみたいと思います!

「部活動も全力で頑張り、ヴァイオリンも熱心に続けて来たヴァイオリン奏者」と

「ただ家にこもって練習し、レッスンを受けて、コンクールを受けるヴァイオリン一筋のみの中学生生活を送ってきた奏者」

どちらを聴いてみたいと思いますか?どちらを親近感持って応援したくなりますか?

私は、間違いなく前者ですねぇ(^^)/

(完)

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